ダイバーシティ&インクルージョンとは?推進メリットと企業事例

ダイバーシティ&インクルージョンとは?推進メリットと企業事例

ダイバーシティ&インクルージョンとは?

ダイバーシティ&インクルージョンは、個々の違いを受け入れ、活かしていく考え方です。年齢や性別、国籍、障がいの有無など、多様な要素を尊重し、それを組織内で包括的に受け入れ、活用することが重要です。

*多様性(ダイバーシティ)は、人々の性別、年齢、国籍などの違いを尊重し、個性を活かす考え方です。
*包括性(インクルージョン)は、これらの多様性を組織内で受け入れ、活用するプロセスです。

なぜダイバーシティ&インクルージョンが重要なのでしょうか?それは、単なる流行りの言葉ではなく、今後のビジネスの成長と社員満足度の向上に不可欠な概念だからです。次に、ダイバーシティ&インクルージョンの推進メリットや成功企業事例について詳しく見ていきましょう。

 

ダイバーシティ&インクルージョンとは?推進メリットと企業事例

インクルージョンが必要な理由

ダイバーシティ&インクルージョンの推進において、最も重要なポイントは、必ずインクルージョンを実践することです。

例えば、ダイバーシティを促進するために、従来は雇用比率が低かった障がい者や外国人を多く雇用した場合を考えてみましょう。ただ多様なバックグラウンドや価値観を持つ人材を雇用しただけでは、その力を最大限に活かすことができません。結果として、「社員として在籍はしているが活躍する場所がない」「他の社員から差別を受ける」などの問題が生じる可能性があります。

実際、経済産業省のある調査によれば、「多様な人材の活用に向けた取り組みなしでダイバーシティを推進すれば、生産性が低下する」と述べられています。したがって、多様性を受け入れ、個々の能力を活かす「インクルージョン」を同時に行うことが不可欠です。

ダイバーシティ&インクルージョンの推進背景

ダイバーシティ&インクルージョンの推進には、複数の理由がありますが、その主な要因は以下の3つです。

1.少子高齢化に伴う労働力人口の減少

日本では、長期的な見通しでは労働人口が減少していくと予測されています。約40年後には、労働人口が現在の約4割も減少する見込みです。このような状況下では、企業は男性中心の終身雇用からの脱却や、女性・高齢者・外国人など多様な人材の積極的な雇用を模索する必要があります。

ダイバーシティ&インクルージョンとは?推進メリットと企業事例

出典:みずほ総合研究所

2.日本の企業文化と新しい価値観

若い世代の間で企業への忠誠心が低下し、ワークライフバランスが重視されるようになったことや、旧来の企業文化からの脱却が求められるようになったことが、多様な人材を受け入れる方針への変化を促しました。

3.グローバル化の進展

1990年代以降のグローバルビジネスの拡大により、新しい市場や低コスト労働力への追求が進み、国籍や経歴の違いを超えた多様な人材の採用が企業にとって不可欠となりました。

ダイバーシティ&インクルージョンを推進するメリット

優秀な人材の確保

ダイバーシティ&インクルージョンを推進する企業は、多様な人材を受け入れる姿勢を示すことで、優秀な人材を引き寄せることができます。これにより、企業の競争力が高まります。

イノベーションの創出

異なるバックグラウンドや視点を持つ人々が集まることで、新たなアイデアや発想が生まれます。ダイバーシティ&インクルージョンを推進することで、革新的なソリューションが生まれる可能性が高まります。

社員のモチベーション向上

多様性が尊重される環境では、社員が自身のアイデンティティを認められ、活かせると感じます。そのため、社員の関与度や満足度が高まり、生産性が向上します。

離職率低下、定着率向上

ダイバーシティ&インクルージョンを推進する企業では、従業員が自分らしく活躍できるため、離職率が低くなります。また、多様性を受け入れる企業文化が定着することで、従業員の定着率も向上します。

ダイバーシティ&インクルージョンを進める手順

人材の多様性を高め、能力を発揮できる風土を築くために、以下の手順を実践することが重要です(「経済産業省 ダイバーシティ2.0 行動ガイドライン」を元に解説します)。

経営戦略への組み込み

経営トップがダイバーシティ&インクルージョンを経営戦略の一部として位置づけ、ポリシーを策定し、KPIやロードマップを設定します。具体的なKPIとしては、女性活躍推進や多様な人材の採用に関する指標を設定することが考えられます。

推進体制の構築

経営トップがリーダーシップを取り、推進チームを編成し、役割を分担します。トップダウンの指示とプロジェクトリーダーの存在が推進の鍵です。

全社的な環境・ルールの整備

全社的な働き方改革や人事制度の見直しを行い、従業員が属性に関わらず活躍できる環境を整えます。従業員の意見を取り入れながら、生産性向上やライフステージに合わせた柔軟な働き方を促進します。

管理職の行動・意識改革

管理職には、多様なチームをマネジメントする能力や無意識バイアス(偏見)に対する意識改革が求められます。定期的なトレーニングやコミュニケーションの促進を通じて、多様性を尊重し活かすリーダーシップを養います。

従業員の行動・意識改革

従業員一人ひとりが自己のキャリアを主体的に築き、多様なキャリアパスを受け入れる文化を醸成します。従業員の自己成長やキャリアに対する意識を高めるために、キャリアオーナーシップの育成を重視します。

ダイバーシティ&インクルージョンとは?推進メリットと企業事例

ダイバーシティ&インクルージョンの成功事例

株式会社ローソン

ローソンは、女性活躍推進を中心にダイバーシティ&インクルージョンの推進に取り組んでいます。その取り組みは、以下のような施策を実施しました。

*女性活躍推進をテーマとした小冊子の配布など、啓発活動の実施
*男性の育児休暇取得を促進する「短期間育児休暇制度」の新設
*管理職研修にダイバーシティ研修の導入

その結果、男性の育児休暇取得率が8割以上に達し、コンビニ業界初の事業所内保育施設を開設しました。また、2020年には女性役員の比率が46%を超え、ダイバーシティ&インクルージョンの推進に成功しています。

ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)推進|ローソン

カルビー株式会社

カルビーは、社員全員が活躍できる環境を整えるために、以下の施策を実施しています。

*ダイバーシティ&インクルージョンの専任部門の設立
*管理職向けの無意識バイアスに関するeラーニングの実施
*女性社員向けの研修やリーダー育成プログラムの準備

これにより、女性の事業本部長が開発した商品の売上が300億円を超えるなど、ダイバーシティ&インクルージョンの推進に成功しました。

ダイバーシティ&インクルージョンの推進|サステナビリティ|カルビー

株式会社メルカリ

メルカリは、社員のダイバーシティ&インクルージョンを推進するために、以下の取り組みを行っています。

*CEO直轄の社内委員会「D&I Council」の設立
*ワークスタイル選択制度「YOUR CHOICE」の導入
*育児や介護支援制度の導入

また、社外向けの取り組みとして、無意識バイアスを理解する研修資料の無料公開やLGBT+に関する社内研修の提供などを行っています。これらの取り組みにより、メルカリはダイバーシティ&インクルージョンの推進に積極的に貢献しています。

「草の根活動」が経営戦略に変わるまで|メルカリ

まとめ

ダイバーシティ&インクルージョンは企業にとって単なるCSR活動ではなく、ビジネス成果に直結する重要な戦略です。多様性を尊重し、それを活かすことで、企業の競争力や持続可能な成長を実現することができます。

組織内でのダイバーシティ&インクルージョンの推進には、リーダーシップのコミットメントや定期的な教育プログラムの提供などが重要です。このような取り組みを通じて、企業は多様な人材の能力を最大限に引き出し、イノベーションや社会への貢献を促進することができます。

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