物流・運送業界の2024年問題がもたらす「悪影響」

物流・運送業界の2024年問題がもたらす「悪影響」

2024年4月に迫る物流・運送業界の問題は、その深刻さがますます浮き彫りになっています。今回は、この問題が業界に与える悪影響について詳しく見ていきましょう。

1.物流・運送業界の「2024年問題」とは?

2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働に関する新たな規制が施行されます。これにより、ドライバーの時間外労働が年間960時間と制限され、輸送能力が低下する恐れがあります。この問題は「物流の2024年問題」と呼ばれ、業界全体に影響を及ぼす可能性が高まっています。

物流・運送業界の2024年問題がもたらす「悪影響」

2.将来、確実に不足するトラックドライバー

2-1.取り扱い荷物数の増加

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出典:国土交通省「宅配便等取扱個数の調査」

過去数年間、宅配業界では急激な成長が見られました。EC市場の拡大やオンラインショッピングの普及により、2022年までの10年間に宅配で取り扱う荷物は13.7億個増加しています。これにより、輸送需要が増える一方で、ドライバーの負担も増大しています。

2-2.ドライバーの高齢化

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出典:国土交通省「道路貨物運送業の運転従事者数の推移」

物流業界におけるトラックドライバーの多くは中高年層で構成されています。就業者全体の45%が40~54歳となっており、全産業と比べても平均年齢は3~6歳ほど高い傾向にあります。これらのドライバーが将来的に引退すると、業界はますます人手不足に陥る可能性があります。若い世代のドライバーの不足が深刻な問題となっています。

2-3.若年層の担い手不足

物流業界は、若年層の就業者数が他の産業と比較して低い傾向があります。これは、物流業界が魅力的なキャリアパスとして捉えられていないことが原因の1つとされています。若年層の不足は、将来的なトラックドライバーの確保に影響を与えます。

3.2024年問題による影響

「持続可能な物流の実現に向けた検討会」によれば、2024年問題が解決されない場合、営業用トラックの輸送能力が2024年には14.2%、2030年には34.1%不足する可能性があると試算しています。これは、物流業界全体に深刻な打撃を与える可能性があります。

4.2024年問題がもたらす「悪影響」

2024年問題が解決されない場合、業界には以下のような悪影響が生じる可能性があります。

4-1.トラック事業者

*荷主や一般消費者のニーズに応えられなくなり、輸送の遅延や断りが発生する可能性が高まる
*人手不足により、輸送サービスの質が低下する恐れがある

4-2.荷主

*物流の混乱により、供給チェーンが途絶える可能性がある
*輸送コストの上昇により、商品価格が上昇する可能性がある

4-3.一般消費者

*商品の配達遅延や品質低下により、消費者の不満が高まる可能性がある
*生鮮食品など新鮮な食料品の供給に影響が出る可能性がある

5.2024年問題解決に向けて

業界が2024年問題に対処するためには、以下の取り組みが必要です。

5-1.荷主とトラック事業者の取り組み

*ルートの最適化や効率化による輸送コストの削減
*ドライバーの労働環境改善や働き方改革の推進
*DX化による効率的な輸送方法の導入

5-2.消費者の取り組み

*輸送遅延への理解と宅配ボックスや置き配の推進
*まとめ買いなど購買行動の見直し
*環境に配慮した買い物習慣の形成

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出典:国土交通省「宅配便再配達実態調査」

6.まとめ

以上ように、物流・運送業界の2024年問題がもたらす悪影響について、解説してみました。2024年問題は、物流・運送業界にとって重大な課題であり、その解決には業界のみならず消費者含めた全体の協力が不可欠です。業界関係者や消費者が共に理解し、対策を講じることが、将来の持続可能な物流システムの構築に不可欠です。

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