ブラック企業とは、長時間労働や低賃金、過酷な労働環境、労働者に不利益な条件を課す企業を指す用語です。社会では、働く環境の質が重要視されていますが、一部の企業では劣悪な労働条件がまだまだ問題となっています。
ブラック企業の特徴
「ブラック企業」にはいくつかの共通した特徴があります。以下に代表的なものを挙げます。
長時間労働
・過度の残業
ブラック企業で最も多く見られる問題の一つが、従業員に長時間労働や過労な残業を強いることです。 厚生労働省で『時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間』と決められています。時にはニュースになるような『過労死ライン』を超えた働き方をさせる企業もあります。
参考:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
・休日出勤
あらかじめ休日出勤に関して求人や面接で告知されていて、賃金が適正に支払われる場合は当てはまりませんが、事前に告知なく本来は休むべき休日にも出勤を強制されることがあります。また、労働基準法で定められた休日や労働時間、賃金の支払い(休日出勤の割増賃金は3割5分)の規定が守られていない場合は違法となるので注意が必要です。
低賃金・不当な賃金体系
・未払い残業代
残業をしても残業代が支払われないケースもブラック企業では多いです。サービス残業が常態化しているため、実際の労働時間に見合った配分が支払われません。現在、未払い残業代の消滅時効は3年と定められています。
・基本給が低い・賃金が上がらない
従業員の労働状況や会社の方針によってことなるので、判断が難しい部分ではありますが、基本給が極端に低く、ボーナスや手当もなく、適正な評価を受けることが出来ないのはブラック企業の特徴の1つです。雇用契約書または労働条件通知書と、実際の雇用後に条件が異なる場合は「労働基準法第15条」によって是正を要求できるので確認が必要です。
ハラスメントがある
ハラスメントにも様々な種類があります。一番有名なセクシュアルハラスメント(セクハラ)は、性的な好みによって相手に不快感を与える行為です。他にもパワーハラスメント(パワハラ)は職場内での権力関係を背景に行われる嫌がらせやいじめを指します。モラハラ、マタハラ、様々な種類がありますがハラスメント行為が行われているのもブラック企業の特徴です。
休暇取得が難しい
・有給休暇の取得が困難
本来労働者に与えられている権利である有給休暇が取りにくく、有給休暇を申請しても、上司や同僚からの圧力で断念せざるを得ない場合があります。必要以上に休暇の理由を聞かれ、取りずらい雰囲気がある場合などもこれに当てはまります。
・病気休暇の取得が困難
病気や怪我で休むことも難しい環境があるのも特徴です。どんな理由であれ休暇を取ることが許されず、無理をして出勤することを強要されます。
離職率が高い
・早期退職
ブラック企業は新入社員や中途採用者が途中で退職するケースが多いです。極悪な労働条件や職場環境に耐えられず、早期に辞めてしまい人員が常に不足しています。
・退職強要
希望していないにも関わらず、本人の希望に関係ない時期に退職をするようにプレッシャーをかけることもあります。これにより、辞める際にも精神的な負担がかかります。
労働環境の悪さ
・職場の清潔さ
職場が不潔で、基本的な清掃や整理整頓が行き届いていない場合があります。これにより、働く環境が劣悪となり、従業員の健康に悪影響を及ぼします。
・安全管理の不足
安全管理が全くされておらず、事故が多く発生する環境があります。本来加入すべき社会保険に未加入であることにより、従業員が病気や事故に遭った際に十分な対応ができていない状態です。
採用時の情報提供不足
・詳細が不明な求人情報
ブラック企業は求人情報に具体的な業務内容や労働条件を入力していない場合も多いです。また、面接時に実際の業務内容や条件について詳しい説明がない場合も要注意です。
・試用期間の延長
実際に求人で掲載されていた内容と異なり試用期間不当に延長される。これにより、正社員としての権利と待遇のない状況が続きます。
ブラック企業の見分け方
転職前にブラック企業を見分けることが大切です。ブラック企業の特徴を理解した上でどのように見分ければよいか求人票や面接で確認すべきポイントを解説していきます。
労働時間
求人確認時や面接時に、労働時間はもちろん残業の頻度、休憩時間についても詳しく確認しましょう。具体的な時間が書かれていない場合も、どれくらいの残業をしているのか確認しましょう。
→休憩時間はどこで過ごすのか、休憩時間に仕事を行うような場面はないか、見逃しがちな休憩の詳細も確認しておくのが望ましいです。
福利厚生の充実度
健康保険などの基本的な福利厚生がしっかりしているか確認しましょう。福利厚生があいまいに提示されており、従業員の健康や安全を考慮していない可能性があります。
労働環境の雰囲気
面接時や企業訪問時に、社員の雰囲気や働く環境を感じ取れるとより良いでしょう。実際に入社しないと分からない部分も多いですが、職場の雰囲気が良くない場合や、社員同士のコミュニケーションが希薄な場合は要注意です。
→可能であれば、面接時に職場を見せてもらえるか尋ねるのも良いでしょう。
社員の声をチェック
ネットの情報を100%信じるのも良くないですが、インターネットや口コミサイトなどで、その企業の評判を調べることができます。社員の退職率が高い場合や、不満が多い場合は、ブラック企業である可能性があります。
法令遵守の確認
入社前になるかと思いますが、労働基準法や労働者派遣法などの法令を遵守していることを確認しましょう。法令違反があるからといって、従業員の権利を侵害している可能性があります。
これらのポイントを踏まえて、就職活動や転職活動を行う際には、ブラック企業を見守るための情報収集を積極的に取り組みましょう。
ブラック企業への対処法
ではもし自分がブラック企業に入社してしまった際はどうすればよいのでしょうか?対処法を解説します。問題にもよりますが、以下の手順が一般的なブラック企業の対処法です。
1.問題の確認と対話
最初に自分の状況を客観的に確認しましょう。残業や過重労働などの問題などは正確な計算などが必要です。その後、上司や人事担当者と話し合い、問題を解決するための解決策を提案します。パワハラなどを受けている場合はどこに相談するのが適切なのか、慎重に選ぶ必要があります。
例1:同僚からのパワハラで精神的な辛さを感じている。
→具体的な内容(メールや録音などの証拠)を踏まえ、上司や人事や社長に相談する。
例2:上司から不正な残業を強いられている。
→人事や社長との面談を行い「労働時間の見直し」などを相談する。
2.労働基準法へ相談・通報
労働基準法に違反があると感じた場合、具体的な残業時間や労働条件の違法性を証拠として収集し、労働基準監督署や労働局に相談します。会社に相談する相手がいない場合(会社全体で違反行為を黙認しているなど)はこの方法が最も有効的です。※相談は匿名でも可能
例1:会社全体で黙認されている過剰な残業が続き、健康状態に影響が出ている。
→労働時間を記録し、法定の上限を超えているか確認。その後、労働基準監督署に相談し法的な支援を受ける。
3.合同組合への加入
労働組合が無い場合、複数の企業の従業員で結成された合同組合に加入し、組合員として同僚とともに改善を求めることも有効です。徐々に賛同者を募り、最終的に会社に改善案を提出しましょう。
4.退職・転職する
相談しても現職が改善されなかったり、特に劣悪な人間関係に耐えられなくなった場合、自分の体や心が壊れてしまう前に、他の職場を探すことを検討するのが最善です。
なぜブラック企業は消えないのか?
ブラック企業が消えない理由は、複数の要因が絡み合っています。
企業が競争力を持ち、利益を追求する過程で、労働環境や従業員のコストに注目が集まり、企業が極端な選択を行う場合があります。また、一部の業界や地域では労働力の供給過剰により、劣悪な労働条件でも働かざるを得ない状況が続いている状況もあります。
また、法の監視や執行が不十分で、違法な労働フローが見逃されていることも多いです。さらに、古い企業文化や慣習が根強く残っている企業では、従業員を酷使することが「当たり前」であり、労働者が権利を主張しにくい環境も問題です。経営者の労働法に対する理解不足や、社会全体でのブラック企業問題への認識不足も影響しています。
成果主義やノルマ制度の強調が、過重労働を常態化させる要因となり得ます。これらの複雑な要因が重なり合い、ブラック企業は依然として存在し続けています。解決には、法の強化や社会全体での意識改革、企業内の文化や制度の見直しが必要です。