現代社会では、「パワハラ」だけでなく、さまざまな形でのハラスメントが問題視されています。誰しもが被害者にも加害者にもなり得るこの問題について、具体的なハラスメントの定義や種類、そしてその対策を知ることが重要です。本記事では、職場で気づかぬうちに行われてしまうかもしれないハラスメントの具体例と、その防止策について解説します。
パワハラとは?ハラスメントの定義とは?
2001年に登場した和製英語で「パワーハラスメント」の略語です。職場において権力や地位を持つ者がその立場を利用して他者に対して身体的・精神的な攻撃を行う行為を指します。
「ハラスメント」は苦痛や不快感を与えて他者を困らせたりたりする行為のことを指し、1980年代から社会問題としても取り上げられるようになった性的な嫌がらせを行う「セクハラ」から一般的に社会で使われることが多くなった用語と言えます。このハラスメント行為は意図的であるかどうかに関わらず、被害者が苦痛を感じるかどうかが重要なポイントです。
具体的なパワハラの例
身体的な攻撃:殴る、蹴る、押すなどの暴力行為。
→部下がミスした際に上司が殴ったり、物を投げたりという暴力を振るっている。
精神的な攻撃:侮辱、名誉毀損、大声で怒鳴る、脅迫するなどの精神的な嫌がらせ。」
→他の社員の前で「無能」「使えない」などと繰り返し罵倒し、精神的に追い詰める。
過剰な要求:不可能な仕事を押し付けたり、明らかに達成できない目標を設定する。
→明らかに1人ではこなせない量の仕事を与え「残業してでも絶対に今日中に終わらせろ」などと無理な期限を押し付ける。
過小な要求:業務内容を故意に簡素化し、能力やスキルを活かせないようにする。
→「お前は仕事ができないからこれくらいしか任せられない」と雑用やスキルを活かせない業務のみを割り振る。
人間関係の遮断: 仲間外れにしたり、情報を意図的に伝えないなどの孤立化行為。
→特定の社員のことを完全に無視し、重要な会議や情報共有の場に意図的に参加させてもらえない。
個人の尊厳を損なう行為: 性別、年齢、国籍などに基づいた差別的な発言や行動。
→「女性だから無理」「年配だから分からない」「外国人だと理解できない」などと決めつけて軽蔑したり仕事を振ったりしない。
主なハラスメントの種類
自分が知らない間に加害者にならないためにも、先ずは日々増えていくハラスメントの種類を把握しておくことが大切です。
【知ってて常識?】会社で問題となりやすいハラスメント
・セクシュアルハラスメント(セクハラ): 性的な言動や行為が対象となるハラスメント。
・モラルハラスメント(モラハラ): 言葉や態度で他人を精神的に追い詰める行為。
・マタニティハラスメント(マタハラ): 妊娠や出産に関する嫌がらせや不当な扱い。
・アルコールハラスメント(アルハラ): 飲酒を強要するなど、酒に関する嫌がらせ。
【時代と共に誕生!】敏感に気を付けていきたいハラスメント
・エイジハラスメント(エイハラ): 年齢に基づく差別や偏見による嫌がらせ。
・ジェンダーハラスメント(ジェンハラ): 性別に基づく固定観念や偏見による嫌がらせ。
・オーバーワークハラスメント(オバハラ):過度な残業や休日出勤を強要し、休息を取らせない行為。
・リモートハラスメント(リモハラ):リモートワーク中に頻繁にビデオ会議を強要したり、休憩中に連絡を取ったりすること。
【こんなものまで!?】会社だけではなく日常でも注意が必要なハラスメント
・カラオケハラスメント:飲み会などでカラオケを強要し、無理やり歌わせたりすること。
・カスタマーハラスメント(カスハラ):顧客が定員に対して過剰な要求やクレームを繰り返す行為。
・ロジカルハラスメント(ロジハラ):論理的な説明を過度に求めたり、意見を論破しすぎる行為。
・マリッジハラスメント(マリハラ):単身者に対して結婚や交際を望んだり、強要する。
・ラブハラスメント(ラブハラ):恋愛や制に関する話題を公共の場に持ち込む。
・エコハラスメント(エコハラ):環境保護を理由に。過度な節約やリサイクルを強要する。
・お菓子ハラスメント(オカハラ):特定の人にだけお菓子を配らない行為、またお土産を強要する。
【無意識にやってしまってない?】自分では気づきにくいハラスメント
・スメルハラスメント(スメルハラスメント):体臭や口臭が理由となる問題や嫌がらせ。
・溜息ハラスメント(タメハラ):溜息を頻繁につくことで不快感やプレッシャーを与える。
・エンジョイハラスメント(エンハラ):仕事やイベントを楽しむことを強要する。
・デジタルハラスメント(デジハラ):SNSやメッセージアプリの過度な監視や無断での共有。
・不機嫌ハラスメント(フキハラ):不機嫌な態度を取り、周囲にプレッシャーを与える。
・フォトハラスメント(フォトハラ):スマホなどで撮影した写真を無許可でSNSにアップするなど。
【これは正直どうなの?】判断が難しいハラスメント
・ヌードルハラスメント(ヌーハラ):麺類をすする音が不快だと感じる人に対して、その音を強調する。
・ジタバタハラスメント(ジタハラ):職場で無駄に忙しく動き回ることで、周囲にプレッシャーを与える。
・告白ハラスメント(告ハラ):職場や学校で無理やり告白をし、相手に不快感やプレッシャーを与える。
気づかぬうちに加害者になる可能性
ハラスメントは、行為者の意図とは無関係に、被害者が苦痛を感じた時点で成立します。そのため、無意識のうちに行っている行為がハラスメントと捉えられることがあります。例えば、冗談や軽い言葉が相手に深い傷を与えることがあるため、常に他者への配慮が求められます。
ハラスメントを防ぐためにできること
会社全体で出来ること
明確なポリシーの策定
ハラスメントに対するゼロ・トレランス(無寛容)の方針を明確に示し、従業員全員に周知します。
定期的な研修
ハラスメント防止のための研修を定期的に実施し、全従業員がハラスメントの定義やそのリスクについて理解する機会を設けます。
オープンな対話の促進
上司と部下、同僚間でのオープンなコミュニケーションを促進し、問題があれば早期に相談できる環境を整えます。
信頼できる相談窓口の設置
ハラスメントが発生した場合に、安心して相談できる窓口を設けます。外部機関を利用することも有効です。
監査と調査の実施
ハラスメントの疑いがある場合は、公平で迅速な調査を行い、必要に応じて適切な措置を講じます。
加害者にならないために個人でできること
自分の言動を振り返る
日常的に自分がどのような言動をしているかを振り返り、他人に不快感を与えていないかを確認します。自分の言動が相手にどう影響するかを考える習慣をつけることが大切です。
フィードバックを受け入れる
周囲からのフィードバックを積極的に受け入れ、自分の行動を改善する機会とします。特に、言動に対する指摘があれば、それを真摯に受け止める姿勢が重要です。
相手の立場に立つ
自分の発言や行動が相手にどのように受け取られるかを考え、相手の気持ちを尊重します。共感力を高めることで、無意識に他者を傷つけることを避けられます。
多様性を尊重する
性別、年齢、文化、価値観など、他者の多様性を理解し、尊重する姿勢を持ちましょう。偏見や固定観念にとらわれずに人と接することが大切です。
丁寧な言葉遣いを心がける
言葉選びに注意し、相手が誤解しないような明確で丁寧な言葉遣いを心がけます。攻撃的な言葉や皮肉、暗に批判するような表現を避けることが重要です。
適切なタイミングでのコミュニケーションを行う
感情的にならず、冷静な状態でコミュニケーションを取るようにしましょう。感情に任せて発言することが、相手にとってハラスメントと受け取られることがあります。
ストレス管理を徹底する
ストレスがたまると、つい感情的な行動に出てしまいがちです。適度な休息を取り、リラックスできる時間を持つことで、冷静な判断を維持するよう努めます。
被害者にならないために個人で出来ること
自分の限界を明確にする
自分が許容できる範囲や、超えてほしくない境界線を明確にしておきましょう。これを他人に伝えることで、無意識のうちにハラスメントが行われるのを防ぐことができます。
不快に感じたらすぐに伝える
ハラスメント行為を感じたら、早めにその場で相手に伝えることが重要です。直接伝えるのが難しい場合は、信頼できる上司や同僚に相談する方法もあります。
メールやメッセージを保存する
ハラスメントが電子的なメッセージで行われた場合、そのメッセージを保存しておくことが重要です。証拠として活用できます。ハラスメントかどうか悩んだ時にはメモに残しておくことも大切です。
同僚や友人に相談する
職場内で信頼できる人に相談し、状況を共有することで精神的な支えを得ることができます。共感やアドバイスを受けることで、被害を少しでも和らげることができます。
会社の相談窓口を利用する
多くの企業には、ハラスメントに関する相談窓口やホットラインが設けられています。これらを活用して、正式な対応を求めることができます。
ハラスメントは、誰もが巻き込まれる可能性のある深刻な問題です。しかし、正しい知識を持ち、意識して行動することで、被害を未然に防ぐことができます。この記事を通じて、職場でのハラスメントに対する理解が深まり、働く環境の改善に繋がれば幸いです。