派遣社員として働くことは、柔軟な働き方を実現する有効な選択肢の一つです。しかし、残念ながら一部の派遣会社では、労働者の権利を軽視するような対応が見られることも事実です。この記事では、安心して働ける派遣会社を選ぶためのポイントをご紹介します。
分かりやすいブラックな派遣会社の特徴
・給与に関する不正常な対応
「残業代は固定で3万円までしか支給できません」 「交通費は実費ではなく一律5,000円の支給です」 「給与明細の内訳については細かい説明はできません」 このような発言は、労働基準法違反の可能性が高い典型的な例です。残業代は実際の労働時間に応じて計算されるべきで、給与明細の内訳は労働者の当然の権利として開示される必要があります。
・社会保険加入を避けようとする
「週30時間以上働いても、あなたの希望なら社会保険には入れないようにできます」 「扶養の範囲内で働きたいなら、うまく調整します」 これらは違法な社会保険加入逃れの提案です。労働時間が週20時間以上の場合、社会保険加入は法的な義務となります。
・有給休暇に関する違反
「試用期間中は有給休暇は使えません」 「有給休暇は事前に3週間前までに申請が必要です」 労働基準法では、6ヶ月継続して勤務し、全労働日の8割以上を出勤していれば有給休暇を取得する権利が発生します。これらの制限は違法です。
隠れた問題のある派遣会社の見分け方
面接時の不適切な対応
・契約内容の説明が極端に短い(~10分程度)
→契約において大事な部分をしっかり説明してくれない場合、契約内容に問題がある可能性があります。
・労働条件通知を明示してくれない
→内定通知書とともに労働条件通知書を明示する必要があります。
・「急いでいるので、今すぐ判断してください」と強要する
→派遣先企業には「募集人数(枠数)」があり、人気の求人は早いもの勝ちなので早く応募を行った方が良いケースもありますが、働く本人の意思を無視して決断を急かすような対応は良い対応ではありません。
・正社員登用の話を過度に強調する
→本人が希望する場合に正社員登用・正社員求人の話を進めるのは良い会社ですが、本人が望んでいない職種や雇用形態を押し進める場合良い会社とは言えません。
契約書の問題点
・契約書に「競業避止義務」が過度に記載されている
→記載されてるのは違反ではありませんが、過度に記載している場合、規定に違反すると訴えられて損害賠償請求をされる可能性があります。契約書は基本的によく読み、自分が納得のいく場合のみサインするようにしましょう。
・損害賠償額が具体的な金額で明示されている
→労使契約で「違約金」「賠償金」の支払いを約束させてはいけません。
・研修費用の返還規定が含まれている
→研修費は会社負担が原則となります。労働関係を不当に強要する研修費用返還の約束は、労働基準法第16条違反となります。
・契約期間が記載されていない
→契約書は基本的に必要ではありますが、派遣会社との雇用契約そのものが口頭のみで締結された場合も有効です。トラブルを回避するためにも書面での通知を希望しましょう。
WEB上でのブラック派遣会社の見極め方
要注意な特徴
・派遣会社の企業情報が著しく不足している
→所在地が不明確、代表者名の記載なし、許可番号が見つからない
・派遣料金や仕事内容が異常に良い
→「高時給なのに簡単」「経験不問で高収入」などの誇大な表現
・採用情報が不自然に多い
→同じ職種の募集が頻繁に更新される(離職率の高さを示唆)
・新着求人が少ない
→更新日時が古い、メンテナンスされていない雰囲気
求人原稿の特徴
・給与・待遇の記載があいまい
→「応相談」「経験により」が多用されている
・勤務時間の記載が不明確
→「実働8時間」のみで休憩時間の記載がない
・必要以上の応募資格
→「長時間勤務可能な方」「残業に対応できる方」
・頻繁な再掲載
→同じ求人が数週間おきに出ている=退職者が多い可能性
口コミサイトの特徴
・極端に評価が低い口コミが複数ある
→派遣会社名でWEB検索した際に続く候補として「やばい」「ブラック」「退職」などが出てくる場合は要注意です。
・同じような内容の苦情が繰り返し投稿されている
→悪い口コミはどの会社でも入っている場合がほとんどなので、内容に注目してみましょう。何度も同じような口コミがされている場合は注意が必要です。
・社会保険未加入や有給休暇が取れない、残業代未払いや急な契約終了の報告
→対応の善し悪しではなく、法的にアウトな内容や「予告なしの急な派遣切りでフォローもなかった」といった口コミが入っている場合は危険です。
・「ステマ」っぽい不自然な高評価レビューが続いている
→過剰にその派遣会社を褒めるような口コミしか入っていないのは怪しいです。
安全な派遣会社の見分け方
派遣会社へのヒアリング項目
□ 派遣事業許可番号の提示(HPや求人に記載あり)
□ 社会保険の加入条件の詳細
□ 有給休暇の付与・取得方法
□ 時間外労働の取り扱い
□ 給与支払日・支払方法
□ 契約更新の条件
□ 教育研修制度の内容
確認すべき書類
□ 労働者派遣契約書
□ 労働条件通知書
□ 就業規則
□ 給与規定
□ 社会保険関連の書類
WEBでの評判の検索のコツ
・企業名+「評判」で検索
※検索した際に予測で企業名+「ブラック」「退職」などのキーワードが出てくる場合、内容要確認
・ハッシュタグでの検索(#企業名、#派遣会社など)
SNSなどはハッシュタグなどでも検索、働いている人の口コミだけでなく、会社のアカウントや情報が分かります
・元従業員の投稿を探す
「働いてよかった」などプラスの口コミがある場合はホワイト企業かも…?
・投稿日時が最近のものか確認(直近1年前後)
『昔はよかったけど、現在は良くない』『昔はよくなかったけど、現在は良い』場合もあります。派遣会社自体も社員の入れ替わりや会社の方向性の変更があるので、最新の情報や口コミを確認するようにしましょう。
・複数の情報源を確認
1つのサイトを確認するのではなく、複数のサイトで確認しながら情報収集しましょう。
オンラインでの確認方法
下記サイトを利用するのもおすすめです。
裁判所の訴訟情報:https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search1
厚生労働省「労働基準関係法令違反に関わる公表事案(令和5年9月1日~令和6年8月31日公表分)」
:https://www.mhlw.go.jp/content/001150620.pdf
国土交通省「行政処分情報」:https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03punishment/cgi-bin/search.cgi
帝国データバンク:https://www.tdb.co.jp/
東京商工リサーチ:https://www.tsr-net.co.jp/
トラブル発生時の具体的な対処法
記録の保管
・労働時間を残しておく(毎日メモしておく)
・給与明細を必ず保管しておく
・上司や派遣元とのやり取りを口頭だけで行うのではなく、メールで残す
・問題のある指示は書面でもらう
相談窓口の活用
【労働基準監督署】に相談する
・給与未払いや残業代請求
・労働時間・休憩時間の違反
・有給休暇の取得拒否
【派遣労働者相談センター】に相談する
・契約に関するトラブル
・派遣先での差別的扱い
・突然の契約打ち切り
【労働組合】に相談する
・継続的な労働条件の改善交渉
・団体交渉の実施
・法的アドバイス
派遣社員として働く際は、自身の権利をしっかりと理解し、問題のある対応には早めに気付くことが重要です。少しでも不安を感じた場合は、各種相談窓口を積極的に活用しましょう。
また、良質な派遣会社も多く存在します。十分な下調べと慎重な選択で、適切な就業環境を確保することができます。