■半導体とは
半導体とは、電気的性質を備えた物質で、金や銀、銅といった金属など電気を通す「導体」と、ゴムやガラスなど電気を通さない「絶縁体」の中間の性質を持つものです。具体的にはシリコンなどの物質や材料が該当します。
温度が上昇するにつれて、電気が通りやすくなったり、不純物を混ぜると電気が通りやすくなったりする性質を活用し、電子部品の電気制御に用いられています。半導体は産業機器だけではなく、パソコン、スマートフォンなどのデジタル機器はもちろん、エアコンの温度調整や炊飯器の火力調整、光や音、距離や速度を測定するセンサなど、生活に身近な大小さまざまなモノに使用されています。
■半導体不足の原因
2020年の秋以降、世界的な半導体不足が課題として顕在化しましたが、その要因はひとつではありません。
・アメリカの対中禁輸措置
2020年12月、アメリカが中国の主要半導体受託メーカーを取引制限リストに追加し、実質的な禁輸措置を導入しました。この措置は、中国がアメリカの機密技術を不正に取得するのを防ぐ狙いがあります。
結果として、中国から米国への半導体輸出量は急激に減少。企業は代替手段として台湾のメーカーに依存しましたが、台湾側も需要に追いつけず、現在も半導体不足が続いています。
・新型コロナウイルスの感染拡大
新型コロナウイルスの感染拡大が人々の生活を一変させたことにより、半導体を用いる製品の需要が予想を大きく上回ったことも、半導体不足をもたらした要因です。
半導体にはさまざまな種類がありますが、不足したのは主にノートパソコンやスマートフォン、テレビ、自動車に搭載されているものです。特にコロナ以前は世界的な自動車消費の低迷により、自動車向けの半導体の生産能力をパソコン用の半導体の生産に充てていた工場が多かったこともあり、品薄な状況をさらに悪化させ、自動車メーカーでは減産や操業停止を余技なくされる事態に陥りました。
また、不足が顕著な半導体の製造ラインは一世代前のものが多く、増産には巨額のコストと時間がかかるため、迅速な対応が難しい状況です。
・サプライチェーンの混乱と輸送コストの急騰
半導体の製造は中国、台湾、韓国、日本など東アジア地域に集中しており、新型コロナウイルスの感染拡大により多くの工場が一時閉鎖。これが世界的な半導体生産に大きな影響を及ぼしました。さらに、EC市場の成長と「Withコロナ」時代への移行により、世界中で海上輸送が増加。これによりコンテナ不足が顕在化し、港湾業務に従事する人材不足も発生。このため海上輸送コストが急騰しています。
これらの要因により、半導体供給に関するサプライチェーンが混乱し、需要と供給のバランスが崩れました。製造拠点の閉鎖と輸送コストの高騰が重なり、多くの産業で半導体不足が悪化。自動車や電子機器業界では生産削減や操業停止を余儀なくされました。
・新たな需要の発生
スマートフォンの5Gへの移行、電気自動車やハイブリッド車の需要拡大、他にビットコインや世界規模でのDX(デジタルトランスフォーメーション)など中長期的なグローバルトレンドに半導体需要が深く関連していることも、半導体不足に影響していると考えられます。
・ウクライナ危機の影響
ウクライナ危機による影響です。半導体の製造に使われる、ネオンやクリプトン、キセノンといった希ガスやレアメタルの一部はロシアやウクライナから供給されているため、サプライチェーンへの影響が懸念されています。
■半導体不足はいつまで続くのか?解消はいつか?
製造業に大きな影響を及ぼしている半導体不足の継続期間と解消の見通しはどうなっているのでしょうか?専門機関や半導体メーカーからは、2024年から半導体不足が解消へ向かう可能性が示されています。
・米中の設備投資
米国や中国では大規模な半導体工場の建設による生産能力の増加が進行中であり、2024年には供給過剰の状態に至るかもしれないとの声もあります。
・TSMCの国内誘致
日本でも、経済産業省主導で台湾のTSMC(台湾積体電路製造)の工場を誘致するプロジェクトが進行中です。TSMCは2021年に日本国内初の工場建設を発表し、2024年からの稼働を目指しています。
・ラピダス社の創立
日本の半導体産業の復活を目指して、ラピダス社が設立されました。ソニーやデンソー、NEC、トヨタ自動車など、日本の主要企業や政府の支援を受け、2020年代後半には先端半導体の開発・量産体制の構築を目指しています。
これらの取り組みにより、半導体不足の解消は2024年を見込む声もあります。関連する企業は工場の安定稼働に期待を寄せており、半導体市場の安定化が産業全体にポジティブな影響をもたらすことが期待されています。