AIの普及でなくなる仕事 なくならない仕事|それぞれの理由も解説

AIの普及でなくなる仕事 なくならない仕事|それぞれの理由も解説

2015年に発表した野村総研とオックスフォード大学との共同研究結果では、10~20年後に、日本の労働者の約半数の仕事が、AIに置き換わる可能性があるそうです。この記事では、AIによって代替され、なくなる仕事とはどのような仕事か、逆に10年後もなくならない仕事とはどのような仕事か、それぞれの理由とともに解説していきます。

AIの普及でなくなる仕事 なくならない仕事|それぞれの理由も解説

1. 日本企業のAI導入率

PwC Japanグループが調査・発表したグラフをみると、日本でAIを導入する企業は2023年には50%と約半数であるにに対し、アメリカでは72%と大半の企業がAIをビジネスに活用しています。また、アメリカでは未導入企業が12%で少数派であるのに対し、日本では35%と企業の約3分の1がいまだ検討・実証段階を脱していないことが分かります。

AIの普及でなくなる仕事 なくならない仕事|それぞれの理由も解説
出典:PwC Japanグループ 2023年AI予測

2. AIの普及でなくなる仕事

AIに奪われる仕事の特徴は、単純作業の繰り返しや、条件分岐によるパターン的な回答が可能なことです。具体的には、以下のような業務が挙げられます。

2-1. 一般事務職

一般事務の仕事はデータ入力や計算、電話応対などが主な業務ですが、これらの作業はAIが得意とする分野であるため、将来的にはAIによって置き換えられる可能性が高まっています。データ処理の精度が向上し、画像認識や音声認識の技術が進化する中で、一般事務の仕事は効率的かつ迅速にAIに代替される見込みです。

今後、AI導入のハードルが下がれば、細かい作業から大規模なデータ処理まで、一般事務の多くの職務がAIによって取って代わられる可能性があります。

2-2. 銀行員

銀行員の仕事においては、数字のチェックや入力、査定、融資の審査などデータを基にした単純業務がAIによって効率的に処理されるようになるでしょう。特に資産運用や株価の予測などは、AIのビッグデータ解析が人間の知識や経験を凌駕しています。

銀行業界はキャッシュレス化やFinTechの進展に伴って変革しており、新しい商品開発や顧客対応などでの人間の必要性が一部残るものの、多くの業務がAI化される可能性が高まっています。

2-3. 警備員

警備員の中で特に監視業務は、AIやロボットによって早い段階で代替される可能性があります。監視カメラやセンサーの進化により、不審者やトラブルの発生を高精度で検知できるようになっています。

AIは疲労せず、連続して高水準の監視が可能なため、警備ロボットも活用されつつあります。これにより、警備員の業務は効果的にAIに代替され、犯罪の抑止力も向上しています。将来的には、警備員が行う監視業務は完全にAIに委ねられる可能性があります。

2-4. 工場作業員

工場勤務の中で特にライン作業と呼ばれる単純作業に従事する人の数は、AIの普及とともに減少しています。AIは単純作業を効率的かつ正確にこなすことができ、24時間365日連続して作業を行うことが可能です。オートメーション化が進みやすい業務が多いため、工場の従業員の仕事がAIによって置き換えられる可能性が高まっています。

在庫管理や不良品の発見、危険が伴う業務など、工場の業務はAIやロボットが得意とする分野が増加しており、これが進むと完全無人の工場が登場する可能性も考えられます。

2-5. 建設作業員

建設現場では人手不足が深刻な課題であり、これに対処するためにAIやロボットの導入が進んでいます。大型の重機や機械がAIによって制御され、無人で作業が行われることが予想されます。一部の建設業者ではAIやロボットを導入して単純作業を自動化し、ベテラン作業員のスキルや情報をAIに学習させる試みも行われています。

また、ドローンを使用した現場全体の進捗管理や作業員のシフト管理にもAIが活用されており、建設作業員の仕事がAIに代替される傾向が高まっています。

参照:中国、AIとロボットを駆使して高さ180メートルのダムを2024年までに建設か

2-6. スーパー・コンビニの店員

スーパーやコンビニの店員の仕事も、AIの進化によって大きな変化が生じています。新型コロナウィルスへの対策としてセルフレジやレジを使わない清算方法が導入され、今後この流れが加速すれば店員のレジ打ちが不要となります。AIは商品や売上のデータ処理を素早く行えるため、在庫管理や発注業務、日々の売上管理業務などもAIによって行われる可能性があります。

さらに、ECサイトやバーチャル空間の普及により、実店舗や小売店の存在そのものが問われる時代が来るかもしれません。

2-7. ライター

ライターの仕事はAIによって大きな変革を迎えつつあります。文章自動生成AIの進化により、特に情報収集やテーマ設定に基づく記事作成の分野がAIによって代替される可能性が高まっています。これにより、ライターはよりクリエイティブな要素や深い洞察を求められるようになります。

未来のライターはAIと協力し、人間ならではの感性や創造性を活かす仕事にシフトしていくことが求められるでしょう。

2-8. 薬剤師

薬剤師の業務もAIによって変容しています。薬の調剤や鑑査などの一部業務は既に自動化が進んでいますが、患者とのコミュニケーションや服薬指導など、人間のアドバイスが不可欠な分野も存在します。

未来の薬剤師は、専門的な知識だけでなく、人間関係やコミュニケーション能力がより重要視されるでしょう。電子処方箋やオンライン販売の拡大に対応し、新たな価値を提供することが求められます。

2-9. 電車運転手

鉄道の分野でも自動運転技術が進展しており、電車運転手の仕事も変化しています。自動列車運転装置の実用化が進み、完全無人運転への移行が検討されています。しかしながら、突発的なトラブルへの対応や安全確保においては、現在のところ人間の介入が不可欠です。

未来の電車運転手は、自動運転技術の進化に対応しつつ、安全管理やトラブルシューティングのスキルを向上させることが求められるでしょう。

2-10. タクシー運転手

タクシー運転手の仕事は、自動運転技術の進化によって大きな変革を迎えています。自動運転タクシーの実用化に向けた動きが進んでおり、AIがセンサーやカーナビゲーションと連携して自動で運転する未来が描かれています。

これにより、タクシー運転手の需要は減少する可能性があり、従来の運転業務に従事していた人々は新たな職種やスキルの習得を迫られることになるでしょう。

2-11. ホテル客室係・ホテルのフロントマン

ホテルのフロント業務は、AIの導入によって自動化が進んでいます。予約の受付や鍵の渡し方などの基本的な業務は、AIがスムーズに処理できるようになっています。また、AIは多言語対応や周辺情報の提供も可能であり、これによって外国からの観光客にも柔軟に対応できます。

ホテルのスタッフはよりサービス向上や顧客対応に特化した仕事にシフトする必要があります。

2-12. コールセンター業務

コールセンター業務もAIの進化によって大きく変化しています。一般的な問い合わせや特定の情報提供など、ルーチンな業務はAIチャットボットやボイスボットが担当し、効率的な対応が可能になっています。

人間のオペレーターはより高度なクレーム対応や柔軟な対話が求められ、コミュニケーションスキルやトラブルシューティング能力が強調されるでしょう。

3. AIの普及でなくならない仕事

人間が細かい個別ケースを考える仕事や、対面での対応により成り立つような仕事は、AIに代替されにくいと考えられます。

3-1. ITエンジニア

ITエンジニアの存在は、AIやロボットの普及にもかかわらず不可欠です。デジタル技術の開発、運用、メンテナンスにおいて、エンジニアの手腕が求められます。AIやロボットにも不具合や故障が発生するため、その修復や改良はITエンジニアが担当します。

また、新たな技術やシステムの開発もエンジニアによって進められるため、AIの進化とともにITエンジニアの需要も増加しています。

3-2. 営業

営業職は、人と人との信頼関係が根幹にあり、感情やコミュニケーションスキルが不可欠です。AIはまだ感情を読み取ることや柔軟な交渉は苦手であり、特にビジネスにおいて人間の営業力には代替し難い側面があります。

取引先との信頼を築き、ニーズを理解した上で提案する営業職は、AIに代替されない仕事として今後も存在し続けるでしょう。

3-3. データサイエンティスト

データサイエンティストはAIが生成する大量のデータを解釈し、ビジネス上の意思決定をサポートします。AIはデータの収集や基本的な分析は得意でも、データから有益な情報を抽出し、戦略的な提案を行うには人間の洞察が欠かせません。

データの中から新たなパターンや機会を見つけ出す力や、その情報を戦略に結びつける能力はデータサイエンティストに求められ、AIには難しい課題となります。

3-4. コンサルタント

コンサルタントの役割は、単なるデータ分析だけでなく、クライアントとの人間関係構築が重要です。AIはデータ解析が得意であり、市場の動向や株価の変動を把握することが可能ですが、その情報をクライアントに理解しやすく伝え、具体的なアドバイスや戦略を提供するのはコンサルタントの役割です。

人間の感情やニーズに寄り添ったコンサルティングはAIには難しく、コンサルタントの存在が不可欠です。

3-5. カウンセラー

カウンセラーの仕事は、人の心に寄り添い、感情やストレスに向き合います。AIは人間の感情を理解し、励ますことが難しく、対面でのコミュニケーションや人間関係の構築において、カウンセラーの存在が欠かせません。

個別の状況や感情に基づいたアプローチは、人間の洞察力によるものであり、AIが代替することは難しいでしょう。

3-6. 医者

医師の仕事は、高度な専門知識だけでなく、患者との信頼関係が不可欠です。AIは特定の病気の診断や治療計画の策定などで活躍する一方で、患者の感情や個別の生活状況への適応力は限定的です。

また、手術などの繊細な医療行為においても、人間の手による技術が必要です。医者の仕事は単なる情報処理だけでなく、人間関係と専門的なスキルの複合が求められ、AIには難しい領域といえるでしょう。

3-7. 看護師・介護士

看護師や介護士の仕事は、AIやロボットが物理的なサポートを提供する一方で、人間の温かいケアとコミュニケーションが欠かせません。生活支援やリハビリテーションの面では技術が進んでいますが、利用者やその家族との信頼関係や感情的なサポートは、人間の役割が不可欠です。

AIはプログラミングされた範囲内でしか動作できないため、臨機応変な対応や心のケアは看護師や介護士に委ねられるでしょう。

3-8. 教師

教師の役割は、知識だけでなく生徒の育成や社会性の醸成が含まれます。AIは情報提供や学習サポートに一役買いますが、生徒の個性や感情に寄り添うこと、人間関係の構築はAIには難しい課題です。

教育の場では、教師の存在が知識のみならず、生きる力や道徳的な指導も含めて重要な役割を果たし続けるでしょう。

3-9. 保育士

保育士も子どもたちの健やかな成長を促す役割を果たしています。5歳くらいまでの子どもは予測不能であり、ルールのない状況にも柔軟に対応する必要があります。AIは子どもの予測不能な行動や思考を理解するのが難しく、マニュアル通りに動作することが難しいため、保育士の個別対応と柔軟なコミュニケーションスキルが不可欠です。

また、安心感や信頼関係の構築は、AIでは難しい課題といえます。

4. シンギュラリティ: 未来の到来とその影響

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4-1. シンギュラリティとは

シンギュラリティ(技術的特異点)は、1980年代からAI研究者たちによって提唱された概念で、人間の脳と同等の知能を持つAIが登場し、その後急激な進化を遂げる時期を指します。米国の発明家レイ・カーツワイルが「人工知能が人間の知能と融合する時点」と定義し、AIが人間と協調して進化する可能性が示唆されています。

4-2. 社会に与える影響・メリット

シンギュラリティの到来により、AIが人間の知能を超越することで様々な影響が生まれます。一方で、AIと人間の共存や協力が進むことで、新たな産業の定義やデジタルトランスフォーメーション(DX)が進展し、社会全体が変容するでしょう。人間の仕事の在り方や価値観にも大きな影響が及ぶことが予想されます。

4-3. シンギュラリティはいつ来る?

シンギュラリティの到来時期については予測が分かれますが、提唱者の一人であるレイ・カーツワイルは2045年をその到来時期と予測しています。一方で、スティーブン・ホーキングや孫正義氏はシンギュラリティの到来に危機感を示し、その影響が人類史上最大の革命を引き起こす可能性を警告しています。未来の技術と人間の関係において、シンギュラリティは大きな転換点となることが予測されます。

5. AIと人間の共存

近年、AIの導入が進み、仕事のあり方に大きな変革が訪れています。しかし、AIは単なる仕事の代替手段だけでなく、人間との協働を通じて新しい価値を生み出す可能性も秘めています。

様々な業界でAIが導入され、これまでの業務プロセスが変革されている中で、重要なのは「AIと人間の共存体制」の構築です。ネガティブな側面からだけでなく、AIが提供する効率性や精度向上を取り入れつつ、人間の特性である柔軟性や創造性を活かすことで、業務環境の改善や生産性向上が可能になっています。

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6. まとめ

AIの普及により、従来の業務や仕事が変容していく中で、一部の仕事は置き換わったり、なくなってしまう可能性もあります。しかしその一方で、AI技術を積極的に取り入れ、業務プロセスの合理化や新たな価値の創出に成功している事例も数多くあります。

AIはあくまで人間が利用するツールであり、競合するものではありません。人間が持つ独自の強みを理解し、それを活かしてビジネスチャンスに結びつけることが重要です。AIの導入によって変化する業務の中で、人間にしかできない強みを活かして、ビジネスチャンスにつなげましょう。

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