2024年は多くの法改正やサービス改正が予定されています。人事・採用・労務担当者など、多くの現場に影響が想定されるでしょう。 2024年、どのようなものが施行されるのか、事前にチェックして、組織内の調整や対応策を整えておきましょう。
1.経費扱いの飲食代の上限引き上げ(4月~)
2024年4月からは、税制改正により経費扱いの飲食代の上限が1万円に引き上げられます。従来の上限が1人当たり5,000円未満であったのに対し、新しい規定では10,000円未満まで損金算入が可能となります。
この変更により、法人は所得を減らすことで法人税の節税につなげることができるようになります。また、法人だけでなく飲食店にも好影響があり、経済の活性化に寄与するでしょう。
2.労働時間規制の強化(4月~)
2024年4月からは、労働時間規制の強化が行われます。物流業・建設業・医師など一部の業種では上限規制が猶予されてきましたが、2024年4月からは上限規制が適用されます。
原則として、時間外労働の上限が月45時間・年360時間まで、医業に従事する勤務医の時間外・休日労働時間は、 原則として年960時間が上限(A水準)となります。これにより、労働者の健康と働きやすい環境が促進されることが期待されます。
3.トラック・バス運転手の労働条件改善(4月~)
2024年4月1日からは、トラックやバスの運転手の労働条件に関する基準が改正されます。これは労働時間や休息時間の向上を図るためのものであり、運転者の安全と健康を守るための重要な措置です。改正後の基準では、4時間を超える連続運転の場合、必ず「30分以上の休憩」が必要とされます。これにより、運転者の疲労や事故リスクの低減が期待されます。
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物流・運送業界の2024年問題がもたらす「悪影響」
4.労働条件の明示ルールが変更(4月~)
2024年4月から、労働条件の明示ルールに変更があります。これには4つの項目が追加され、労使間の認識のズレや有期雇用者の無期転換に関するトラブルを未然に防ぐことを目的としています。使用者側に新たに義務付けられる明示事項は以下の通りです。
*就業場所・業務の変更の範囲を明示
*更新上限の明示
*無期転換の申し込み機会の明示
*無期転換後の労働条件の明示
違反した場合は30万円以下の罰金が科される可能性があるため、企業は適切な対応が求められます。
5.障害者の法定雇用率引き上げ(4月~)
障害者の法定雇用率が2024年4月から段階的に引き上げられます。現行の2.3%から、2024年4月には2.5%、2026年7月には2.7%へと引き上げられます。また、障害者差別解消法の改正により、事業者は障害のある人への合理的配慮の提供を義務付けられます。
*合理的配慮の提供とは:
行政機関や事業者が、障害者からの要望があった場合に、適切でかつ負担が過重でない範囲で社会的なバリアを取り除くことを指します。企業はこれらの新たな要件を遵守する義務があります。
6.所得税・住民税の定額減税(6月~)
政府は2024年6月から、納税者本人と扶養家族を対象に定額減税を導入します。納税者本人には4万円(所得税3万円+住民税1万円)、扶養親族がいる場合には1人当たり4万円が加算されます。ただし、納税者本人の合計所得が1,805万円(給与収入2,000万円)を超える場合には対象外です。
給与所得者は、所得税減税分が2024年6月の源泉徴収税額から控除されます。従って、事業者は源泉徴収の手続きにおいて対応する必要があります。
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【図解入り】定額減税と給付をわかりやすく解説|令和6年(2024年)6月スタート
7.新紙幣の発行(7月~)
2024年7月3日に、新しい紙幣が発行されます。この新しいデザインには、一万円札には実業家の渋沢栄一、五千円札には女性の地位向上に貢献した津田梅子、そして千円札には生物学者の北里柴三郎が描かれます。
政府はほぼ20年おきに最新技術を取り入れた新紙幣を発行しており、偽造防止と「タンス預金」の循環促進がその目的です。日本銀行によると、国内の家計金融資産の約54%が現金や預金であり、その循環を促すために新旧紙幣の交換を契機に資産を循環させることが期待されます。
8.社会保険の適用範囲拡大(10月~)
2024年10月から、社会保険の適用範囲が拡大されます。従業員数51人以上の事業所は、週の所定労働時間が20時間以上などの基準を満たしたパート・アルバイト従業員も、社会保険に加入させなければなりません。
社会保険への加入には将来の年金額増加や傷病手当金、出産手当金の利用などのメリットがありますが、毎月の給与から保険料が差し引かれるデメリットもあります。また、扶養の範囲内で働き続けたい場合は月額8万8000円以内に抑える必要があります。
9.ハガキと定形郵便の値上げ(秋頃~)
2024年秋頃に、ハガキの郵便料金が63円から85円、定形郵便の25g以下の封書が84円から110円、50g以下が94円から110円に値上げされます。これは輸送コストの高騰やメール、SNSの普及による需要減少などが背景にあります。
国内郵便の量は20年ほどで144億通まで減少し、通信販売の増加により小包や荷物の量は増えていますが、個人が郵便を利用する機会は減っています。
10.固定電話のサービス終了(12月末~)
NTTは2024年を以って、固定電話(アナログ/ISDN回線)のサービスを終了することを発表しています。携帯電話の普及により固定電話の契約数が減少し、通信会社にとって維持に費用がかかることが理由です。
契約中の固定電話はアナログ/ISDN回線のサービスが終了後もIP網に移行され、現状同様に使用できます。利用者側では特に設定や工事の必要はありません。この移行により通信料が安くなるメリットもあります。