「物流」という業界は私たちの生活に欠かせない存在です。通販の購入ボタン一つで注文した商品がスムーズに届くのは、物流業界の働きのおかげです。しかし、この業界には様々な課題が存在し、特に2024年には大きな変化が予想されています。本記事では、物流とは何か、そして物流業界が抱える「物流問題2024」について詳しく解説します。
物流とは？
物流とは、商品を生産者から消費者へ届ける一連のプロセスを指します。具体的には、商品の保管、梱包、運搬、配送、在庫管理などが物流の仕事に含まれます。物流業界は、これらのプロセスを効率的に管理し、商品が正確かつ迅速に届けられるよう努めています。
～物流業界の仕事例～
【輸送】トラック、鉄道、船舶、航空機などを用いて物資を移動させる。
【保管】倉庫で商品の保管を行い、需要に応じて出荷する。
【荷役】商品の積み下ろしや取り扱いを行う。
【包装】 商品の保護や輸送を容易にするための包装作業。
【仕分け】倉庫内で入荷した商品をカテゴリ別に分ける作業。
【ピッキング】出荷指示に基づき、倉庫内の商品を集める作業。
【流通加工】商品の組み立てや加工など、流通過程で付加価値を加える作業。
【物流事務・情報管理】在庫管理や輸送状況の追跡など、物流に関する情報を管理する。
物流は現代の経済において欠かせない要素であり、効率的な物流システムの構築は、企業の競争力を高めるために非常に重要です。
「物流の2024年問題」
物流業界は、長年にわたり労働時間の長さや労働条件の過酷さが問題視されてきました。特にトラック運転手の労働時間に関する法改正が話題となっており、2024年4月からは時間外労働の上限が年間960時間に制限されました。これにより、トラック運転手の労働環境は改善される一方で、トラック運転手の労働時間が制限されることで、輸送能力が減少し、配送の遅延や物流コストの増加が懸念されています。特にEC市場の急成長に伴い、宅配便の需要が増加している中で、この規制が与える影響は業界全体に深刻な影を落とすことが予想されています。
参考：全日本トラック協会
影響と課題
下記の課題は、物流業界における労働時間管理の変化がもたらす影響として、業界内で議論され、解決策の模索が続けられています。
１:トラック運転手の労働時間制限による運送能力の低下
トラック運転手の時間外労働の上限が年間960時間に制限されたことで、労働時間の管理が厳格化されます。これにより、運送業務を担うトラック運転手の稼働時間が制限され、今までと同じ動きが出来ないことから運送能力に影響を及ぼす可能性があります。
2：労働力不足の懸念
物流業界では従来からトラック運転手の不足が課題でしたが、労働時間の制限により、既存の労働力だけでは需要を賄いきれなくなる恐れがあります。特にEC市場の成長に伴う配送需要の増加が顕著で、需要と供給のバランスがさらに重要となっています。
3：配送の遅延とコスト増加
労働時間の制限や労働力不足が原因で、配送の遅延やコストの増加が発生する可能性があります。適切な人員配置や配送計画の調整が困難になることで、顧客サービスの質に影響を及ぼすリスクが生じます。
4：技術革新への要求
この課題に対応するため、自動運転技術や配送ルートの最適化、倉庫管理システムの導入など、技術革新が求められています。これらの技術投資は大きな費用と時間を要し、業界全体の変革が求められています。
対策と展望
さまざま対策を通じて、物流業界は2024年問題に対応し、持続可能な成長を実現するための基盤を築いています。
1：労働時間管理の見直しと効率化
労働時間の制限により、労働時間の管理を効率化し、より効果的に配送業務を行うためのシステム導入やルート最適化が求められます。これにより、少ない労働時間内での作業効率を向上させ、輸送能力の低下を最小限に抑えることが目指されます。
２：技術革新と自動化の推進
自動運転技術や倉庫内ロボットの活用、AIを活用した配送ルートの最適化など、技術革新を加速させることで、労働力不足や労働時間の制限に対応します。これにより、人手不足を補うとともに、作業の効率化とコスト削減を実現します。
３：人材の育成と質の向上
物流業界における高度化・専門化された人材の育成を促進し、労働力の質を向上させることが重要です。トラック運転手の技術や安全意識の向上、配送計画の緻密化など、専門知識とスキルを持つ人材の確保と育成が求められます。
４：持続可能な配送ネットワークの構築
環境に配慮した持続可能な配送ネットワークの構築が求められます。エコフレンドリーな車両の導入や排出物の削減、効率的なルート計画による燃料消費の最適化など、環境負荷の低減を目指します。
５：業界全体の協力と政策支援
物流業界全体での協力体制の強化が必要です。業界団体や政府との連携を通じて、政策的な支援を受けながら、業界の課題に対応するための戦略的な取り組みを推進します。
物流業界で求められるスキル
それぞれの職種が果たす役割と業務内容に応じて異なりますが、以下のようなスキルがあると実際に業務を行う際に活かすことが出来ます。
物理的な作業能力・体力
商品の保管や運搬には、体力や作業の効率性が求められます。例えば、配送でお客さんの玄関先まで重い荷物を安全・迅速に運ぶための体力、倉庫内にて正しい保管場所まで運びながら、効率よく種類ごとに仕分ける体力などが必要です。
安全管理
商品の保管や運搬中に安全を確保するための知識と意識が必要です。例えば、輸送中の荷物の安全な固定や、倉庫内での作業時の安全基準の遵守などが含まれます。
正確な作業と注意深さ
商品の梱包や在庫管理では、正確さと注意深さが重要です。例えば、倉庫でピッキングを行いながら正確な商品のラベリングやバーコードのスキャン、梱包の際の破損品の取り扱いなどが該当します。
コミュニケーション能力
なかにはモクモク作業でひたすら自分の任せられた業務を集中して行う場合もありますが、重い荷物の移動などチームと協力して効率的に作業を進めるためには、コミュニケーション能力が必要です。例えば、チームメンバーや上司とのスムーズな連携や指示の理解が求められます。
基本的な計算能力
在庫管理や運搬時には、基本的な数学的計算（例えば、数量の計算や単価の計算）が必要とされることがあります。
問題解決能力
物流作業には常に予期せぬ問題が発生します。その際には迅速かつ効果的に問題を解決する能力が求められます。例えば、遅延や緊急の対応が必要な場面での対応力が挙げられます。
テクノロジーの基本的な理解
最近は人員を上手く使うために最新の設備が搭載された倉庫も増えています。バーコードリーダーや在庫管理システムなど、基本的なテクノロジーの使用方法やデータ入力のスキルが必要です。
物流で働きたい方へ
2024年問題は、単なる労働時間の規制を超えた、物流業界全体の労働環境や業務運営のあり方に対する大きな試練です。この問題を克服するためには、技術革新と効率化の推進、持続可能な発展の追求が不可欠です。物流業界はこれらの課題に対して積極的に取り組んでおり、今後の展望に向けて業界全体が協力し、持続可能な未来を築いていくことが期待されています。
人材不足が問題とされている物流業界ですが、実は働く側にとっての魅力はたくさんあります。例えば、勤務時間帯に融通が効くのでプライベートと両立しやすかったり、単純作業も多い為、幅広い年代の採用を行っていたりします。未経験から始めやすい業種でもあるので気になる方はチャレンジしてみてはいかがでしょうか？
